本シリーズの前提
本シリーズは、私が公認会計士試験を突破するまでに、どのような勉強をし、何を考えてきたのかを書き記した、個人の体験談です。私なりに苦しみ、試行錯誤してきたので、誰かのお役に立てるのではないか、と考えて、書き記すことにしました。
なお、ここで紹介するシステムは、論文式試験(二次試験)に比較的特化しています。もちろん、一次試験に転用できる部分も含みますが、全てが転用可能な考え方ではないことをご了承ください。
なぜ今、「システム」なのか?
理論は、すでにそこにある
いきなりですが、みなさんは「効果的な学習方法」と聞いて、何を思い浮かべますか?私は、おおよそ次のような項目に収束するのではないか、と考えています。
- ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩のセットを繰り返す)
- 分散学習(忘却曲線に沿った反復復習)
- アウトプット重視(想起練習、人に教える)
- 適切な休息(睡眠、運動、食べ過ぎない、仮眠)
これらは、私がこれまで読んできた数多くの書籍でも、共通して語られている内容です。そして、科学的にも効果が実証されているようです。つまり、学習理論はある意味で「コモディティ化」している、と言えるのではないでしょうか。

欠けているのは「実装」の方法論
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。 理論は知っているのに、なぜ実践できないのか? という疑問です。
たとえば、「分散学習が大事」と頭では分かっていても、膨大な試験範囲の中で、具体的にいつ、何を復習すればいいのか。その管理コストに圧倒されて、結局は分散の間隔を"感覚"的に決めてしまい、非効率な学習に戻ってしまう。そんな経験はないでしょうか。
理想論としての「あるべき姿」と、泥臭い「日々の実践」。この間には、驚くほど深く広いギャップが横たわっています。これは、周りを見て私が常々感じるところです。
競争優位性は「仕組み化」から生まれるという仮説
特に、資格試験のような相対評価の競争では、単に理論を知っているだけでは武器になりません。誰もが知っている内容は、論理的に考えて、それ自体がアドバンテージになりえないからです。
では、競争優位性の源泉はどこにあるのか。それは、 「理論を自分自身の学習にどう体系的に落とし込むか」 という実装力にあると私は考えています。
他者が「なんとなく」勉強している間に、自分は緻密に設計されたシステムの上で、淡々と努力を積み重ねる。この「仕組みの差」こそが、合否を分ける決定的な要因になる。私はそう考えています。
本シリーズが提示するもの
そこで本シリーズでは、私が公認会計士試験(論文式)のために構築した「学習管理システム」の全貌を公開します。
これは、単なる合格体験記ではなく、学習理論をデジタルツールや目標設計によって「実際に回るシステム」へと昇華させた、一つの具体的な実装例です。
そのため、「どのテキストを選ぶべきか」「各科目をどう勉強すべきか」といった、一般的な(会計士試験の)合格ノウハウを期待している方には、少しずれた内容になるかもしれません。その点は事前にご承知おきください。
対象読者
本シリーズは、学習効率を最大化したいと願うすべての方に向けたものです。なかでも、特に次のような方に有益だと考えています。
- 学習管理でパフォーマンスを上げたい方:会計士試験に限らず、あらゆる学習に応用できる考え方を提示します。
- 試験まで時間的猶予がある方:システムの導入には初期コストがかかります。そのため、直前期の方にはおすすめしません。
- デジタル・アナログを問わず「仕組み」に興味がある方:ツールはあくまで手段です。本質的な考え方は、紙のノートでも再現できます。
シリーズ構成
本シリーズは、次の構成で順次公開していきます。
第一部:設計思想
1. なぜ管理したのか(動機・背景・失敗談)
- 無策による必然的な敗北と、凡人としての戦略
- 管理好きという自分の「性(さが)」の発見
2. 受験のKPI設計
- 学習を「インプット」と「アウトプット」の2軸で数値化する
- 単なる勉強時間ではなく、合格との相関が高い指標を追いかける
第二部:実装詳細
3. インプットKPIシステム
- API連携による学習履歴の自動取得と可視化
4. アウトプットKPIシステム
- 答練・模試の成績管理と、平均点乖離の分析
5. 学習そのもののシステム化
- 赤シートのデジタル化と、論点データベースの構築
- 脳内ネットワークを再現する、論点の有機的な結合
第三部:実戦と統合
6. 本試験対策システム
- 演習中の思考ログ記録と、感想戦への接続
- 「地雷問題」を避けるための難易度分析
- あえて自分に「デバフ」をかける、高負荷トレーニングの設計
7. 全体統合と実際の運用
- すべてのシステムを有機的に連携させ、日々のルーティンに落とし込む
第四部:振り返り
8. 反省(しくじり共有)
- 失敗したKPI、役に立たなかった分析、無駄だった作業
9. Appendix(一次試験専用のお話)
- マークシート特有の「運ゲー」要素への対処法
筆者の背景
なお、本シリーズは匿名での公開のため、信頼性に欠ける部分があるかもしれません。そこで、一定の透明性を保つために、参考までに筆者の背景を記しておきます。なお、本論の内容とは直接関係ありませんので、あくまで参考程度にご覧ください。
- 京都大学 経済学部出身
- 受験歴:
- 大学3年時に、9ヶ月の準備で初受験するも不合格
- 一度は就職活動を経験するも、「やはり会計士として生きたい」と再決意
- 2024年12月 短答式試験 合格
- 2025年8月 論文式試験 合格
使用ツール
本システムでは、次のデジタルツールを活用しています。
- Google Apps Script(プログラミング言語)
- Notion(API利用含む)
- Google スプレッドシート
- 生成AI(ChatGPT / Claude)
- Miro(ホワイトボードツール)
業務でこれらのツールに触れている社会人の方にとっては、そのスキルを学習管理に転用する、良い事例になると思います。
一方で、学生の方やツールに馴染みのない方には、少しハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、重要なのはツールそのものではありません。「その仕組みで何を解決しようとしたか」という設計思想です。ですので、「この機能は紙のノートならどう実現できるか?」といった視点で読み進めてみてください。
自分だけのスタイルを、試行錯誤しながら作り上げること。それこそが、誰にも真似できない強力な競争優位性になります。
なお、本シリーズでは、各ツールの役割と活用方法に焦点を当てています。そのため、セットアップ手順やコードの詳細は省略しました。技術的な実装に関心がある方が多いようであれば、別途、実装ガイドを作成する予定です。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
繰り返しになりますが、本シリーズでお伝えしたいのは、特定のツールの使い方ではありません。「やりたいことを、自分自身の学習にどう落とし込み、実現させるか」 という、その一点に尽きます。ですので、私のやり方をそっくり真似する必要はまったくありません。
むしろ、大切なのはその逆です。本シリーズを一つのたたき台として、みなさんが 「自分なら、ここをこう変える」 と考えはじめてくれること。そうやって試行錯誤を重ねた先にこそ、誰にも真似できない、自分だけの仕組みが立ち上がってきます。
そして、その積み重ねは、きっと試験本番だけのものでは終わりません。「自分の学びを、自分で設計する」という感覚は、合格したあとも、長く支えになってくれるはずです。
このシリーズが、みなさん自身の学習スタイルを振り返る、その小さなきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。



